ジョン・バトラー・トリオ【F's GARDEN -Handle With Care- Vol.24】

月とロック…ジョン・バトラー・トリオ


世はロックフェス全盛が続いています。会場には屋内スペースも有ったりしますが、基本的には野外ライブであり、昼にせよ夜にせよ、あのオープンエアの下で聴くロックの開放感が、なんともたまらないわけです。


フェスに限らず、屋根の無い競技場や野外音楽堂などなら、その空気感は味わえます。野外でライブ参戦体験のある方なら、それぞれにステキな想い出が沢山ある事でしょう。私が特に印象深かったのは、80年代にさかのぼりますが、ロサンゼルス郊外の野外音楽堂、グリークシアター(日本で言うと、日比谷野音と言うよりは、よみうりランドイースト的なシチュエーションでしょうか)で観た、UB40を先ずあげたいです。ビールを買うにもいちいちIDチェックが必要で、面倒くさいなぁなんて思いつつも、カリフォルニアの青空の下からの、美しい夕暮れ、そこに心地よく流れるブラスとレゲエのリズム。会場が闇に包まれて行くほどに、場内の熱気は高まって行き、大ヒット曲きっかけで熱狂の渦に包まれて行きました。満月まであと少しでしたが、美しい月光下の、帰りの夜道もLAの夜景も瞼に焼き付いています。


そして、日本国内の野外ライブで一番心に残っているのはと言うと…これが100本以上観ているので、全く絞れないのですが、特に満月の夜、その満月を見上げながら最高の演奏をしてくれたアーティストを取り上げたいと思います。

それが、今回のブログの主役、ジョン・バトラー・トリオです。


ジョン・バトラー・トリオ(The John Butler Trio)はオーストラリア出身で、白人でドレッドヘアーのジョン・バトラーを中心とした3ピースバンドで、音楽性は新しいレイドバック/サーフミュージックと評された、2000年前後辺りからベン・ハーパー、Gラヴ、ジャック・ジョンソンらの台頭以降に確立された、デジタルを極力排除しアコギを中心にブルース、レゲエ、カントリー、フォークをミックスし、さらに、ドノヴァン・フランケンレイターらの登場により、ソウル、ファンク、ヒップ・ホップ、AOR、フュージョンなどをも吸収した音楽を作り上げていった“オーガニックミュージック”、“スロー・ライフ・ミュージック”と呼ばれたジャンルの1アーティストと言えます。その中心人物、ジョン・バトラーはカリフォルニアに生まれ、11歳からオーストラリアに移り住んだそうで、音楽好きの両親の影響で早くから音楽に目覚め、ハタチを超えた頃にはプロを目指し、25歳の頃に自主制作アルバム「John Butler Trio」をオーストラリア全土で大ヒットさせます。2004年のアルバム「サンライズ・オーヴァー・シー」で不動の人気を獲得、ワールドワイドの活躍へと飛躍を遂げます。オーストラリアでは音楽賞を総なめにして、2005年にはフジロックの雨中のステージが大きな話題となりました。


「サンライズ・オーヴァー・シー~2枚組スペシャル・エディション」 

発売中 ¥2,838+税/WPCR-12242/3 

【日本盤のみ、ビデオクリップ2曲収録のCDエクストラ仕様】 

*ビデオクリップ収録曲①ゼブラ②ホワット・ユー・ウォント 


そのサウンドは、まるで大地に根を張ったかのような力強さを携え、時には大海原のうねりのようなセイリング感を味合わせてくれる。テクニカルなアコギとオーガニックなヴォーカル、ジョン・バトラー・トリオの日本デビュー盤『サンライズ・オーヴァー・シー』に、2005年7月のスイスの野外フェスでの5曲ライブ+1曲アナザーヴァージョンのスペシャル・エディション盤をカップリング。ブックレット内のジョン直筆の歌詞カードとイラストも実にアーティ。


さて、沢山良い曲がある彼らですが、多くのファンを特に虜にしているのは、インストゥルメントナンバーながら代表曲という「オーシャン」というナンバーではないでしょうか。先に挙げた「サンライズ・オーヴァー・シー~2枚組スペシャル・エディション」のボーナスディスクのライブテイクでは10分以上の白熱の演奏のテイクで収められていて、個人的にはこのテイクが1番おススメですが、先ずはこの曲のさわりだけでも聴いて欲しいです。



美しいアルペジオのコードワーク、グルーヴィーでパーカッシブなリズムの中、激しいストロークと熱いソロのインプロビゼーション…それらがAメロ、Bメロ、Cメロ、Dメロと、同じ波が二度とこない大航海のように、何度も何度も押し寄せるウェイヴのようなダイナミズムに、月が三日月から徐々に満月に満ちていくように、グイグイと引き込まれてしまいます。


そして、2007年のフジロックで、多くの音楽うるさ型ファンにベストアクトの称号を得た、素晴らしい彼らのライブを私は目撃したのでした。会場は一番大きなグリーンステージを抜けた後、鬱蒼とした森に囲まれた、フジロックの会場で2番目に大きなホワイトステージでした。 “オーガニック系”などという呼び名は彼らの生演奏には、誠にぬるすぎる表現で、プログレッシブロック系のアーティストにも負けず劣らずの、高い緊張感とテンションをインプロビゼーションに叩きつけた、強烈なサウンドワールドでした。その中核を成すジョンのギターは、なんと、11弦のアコースティックギター(遠くからは12弦に見えていましたが…)。そこにディストーションなどのエフェクターをギンギンにかまして、複雑で最上級のテクニックによる、シビれるようなギターサウンドを聴かせてくれたのでした。本当にライブであそこまで陶酔した経験はそう何度もあるものでは無い気がします。その夜は森の葉波がクッキリと月光に浮かび上がるほどの、真っ白に浮かび上がった満月の夜でした。満月とロック。人生で一生忘れる事のない、至高の瞬間を味わうことができたのでした…。


さて、ここからはこのブログのオマケです。そのフジロックの直後、東京渋谷のクラブクアトロで、彼らのワンマンライブが開催され、もうこれ以上、1人も押込めないだろうと思えるほどの超満員の中、彼らの単独ライブを堪能して、さらに終演後の楽屋にお邪魔させて頂く機会に恵まれました(最初のフジロックの楽屋でもお会いしていますが、あの時はお互いに雨によりびしょ濡れで、ほぼ会話無しでした)。

見た目通りナチュラルで飾らない笑顔で迎えてくれたジョンと、その時はなぜか他に誰も居なかったのもあり、色々な会話をさせて頂き、最後に左手の指先を触らせてもらったんです。柔らかいエレクトリック弦ならまだしも、ガットのギター弦をあそこまでテクニカルに力強く弾きこなせるのだから、さぞかし指先はマメでかちんかちんなんだろうという個人的な興味からでした。

快く触らせてくれたジョンの指先は…なんとマメ1つない柔らかくキレイな指先でした。私が驚いていると、彼は「ハハハ、ギターを弾くのにチカラなんて必要ないよ」と。天才的なセンスは、そんな一旦からも伺えたのでした。

“もう長いことギターヒーロー”に出逢えていない…とお嘆きの貴兄がもしもおられましたら、改めてジョン・バトラーはいかがでしょうか?



T-Kawa 

音楽が好きすぎて、逆にノンジャンルな趣味性のオヤジです。 

2万枚のCDに囲まれてる自宅より、ここでは誰もが知ってるメジャーアーティストの名盤を抽出して、“あ、そんなのあったあった”と想い出していただけるようなご紹介をして行きます~。

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