【WML×MLC連動連載企画】マイルス・デイヴィス『TUTU』『トミー・リピューマのバラード ジャズの粋を極めたプロデューサーの物語』より
マイルス・デイヴィス『TUTU』
新刊『トミー・リピューマのバラード ジャズの粋を極めたプロデューサーの物語』より
3月29日に発売になった新刊『トミー・リピューマのバラード ジャズの粋を極めたプロデューサーの物語』は、1960年代からブルー・サム〜A&M〜ワーナーなどで数多くの名盤を手がけたプロデューサー、トミー・リピューマの評伝です。著者は自らもオルガン/キーボード・プレイヤーとしてジャズ/ポピュラー音楽界で著名なベン・シドラン。すでに複数の著作も上梓している作家としての横顔も持つ彼が、トミー・リピューマの人物像を軸に、音楽業界の裏側や名盤の舞台裏を包み隠さず描いた一冊です。
そして本連載は、短期集中で毎回アーティスト/作品単位でのテーマを取り上げ、同書からそれにまつわる部分をご紹介していこうというもの。同時に、トミー・リピューマが多くの作品を残したワーナーミュージックのウェブサイト「ワーナーミュージックライフ」(WML)とミュージック・ライフ・クラブ(MLC)と連動した連載として別々のテーマを取り上げ、双方で同時に展開。両方同時に読むことで倍楽しめる!ことを目指しました。前回のボブ・ジェームス&デイヴィッド・サンボーン『ダブル・ヴィジョン』に続き、今回は マイルス・デイヴィス『TUTU』を取り上げます。
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マイルス・デイヴィス『TUTU』は、記念すべきワーナーブラザーズ・レコード移籍第1弾。トミー・リピューマ&マーカス・ミラーとのコラボレイションで作り上げた、80年代復活後のマイルスが残した金字塔的作品です。 以下は『トミー・リピューマのバラード ジャズの粋を極めたプロデューサーの物語』の本文より。
マイルス・デイヴィス『TUTU』
翌朝、トミーはマイルスに電話して、「ねえ、どんなにすごいのが録れたか、わかってるかい?」と伝えると、マイルスは「いや、俺はもう疲れ切っちゃって」と言い、その日の午後に予定されていたレコーディングをキャンセルした。しかし電話を切る前に、彼はトミーが絶対忘れることができない発言をした。彼の演奏について、マイルスはトミーに言った。「あのな、あれはただのブルースさ。すべてはブルースから生まれてるんだ」。それからというもの、トミーは「実際にこれが起きているなんて信じられない」と何回もくり返し自分に言い聞かせていた。トミーは、崇拝するマイルスが、かつてないほどブルースに深く根差した演奏をするのを聴くことができたのだ。
『TUTU』はトミーがプロデュースした中でドラム・マシーンを使用した唯一のアルバムだった。「僕自身の捉え方としては」トミーが言う。「目新しいオモチャが登場すると猫も杓子もそれに飛びつき、それが度を越してしまうと、真の目的がある道具としての使い方ではなく、たんなるファッション的な主張になってしまう。どんな時に使うのかを知ること、より重要なのは、どんな時には使うべきでないかを知ることが鍵なんだ。当時はほとんどのヒット曲が、安易にプログラム可能なこの種の機械から出てくるリズム・パターンに頼っていた。僕は息遣いが感じられるものが好きで、残念だけどドラム・マシーンが生み出すサウンドにはそれが感じられない」
しかしマイルスはドラム・マシーンに抵抗がなかった。しかも彼はそれに合わせてグルーヴすることができた。「マイルスには」トミーが言う。「グレイ・ゾーンがまったくなかった。心地よく感じるか、そうでないかのいずれか。自分から馴染もうとはしなかった。この男に関する限り、すべてがタイミング次第だった。彼は実に率直な人間だった。計算づくなところがまったくなかった。これこそが彼と付き合っていて僕がもっとも好きな部分だった。彼自身がその演奏に表れていたんだ」
【WML×MLC連動連載企画】『トミー・リピューマのバラード ジャズの粋を極めたプロデューサーの物語』より
第1回 MLC・2021.05.07 フィル・スペクター “サウンドの壁”
第2回 WML・2021.05.07 マイケル・フランクス『アート・オブ・ティー』
第3回 MLC・2021.05.14 ザ・ローリング・ストーンズ『タイム・イズ・オン・マイ・サイド』
第4回 WML・2021.05.14 ジョージ・ベンソン『ブリージン』
第5回 MLC・2021.05.21 モンタレー・ポップ・フェスティバル──ザ・フー、ジミ・ヘンドリックス
第6回 WML・2021.05.21 ボブ・ジェームス&デイヴィッド・サンボーン『ダブル・ヴィジョン』
トミー・リピューマのバラード
ジャズの粋を極めたプロデューサーの物語
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関連ニュース BOOK・2021.03.03
3/29発売
ジャズやポップスの名伯楽トミー・リピューマ波乱万丈な人生を、ベン・シドランが綴る〜『トミー・リピューマのバラード ジャズの粋を極めたプロデューサーの物語』
『トミー・リピューマ・ワークス』
ワーナーミュージック・ジャパン
AOR、シティ・ミュージックの先駆者である今は亡き名プロデューサー、トミー・リピューマ。貴重な写真の数々を掲載したブックレットを収録した、音楽の自叙伝ともいえるCD3枚組45曲収録の楽曲集。
アメリカの音楽界だけでなく、日本のポップス・ミュージック・シーンにも多大な影響を与え、AOR、シティ・ミュージックの先駆者である今は亡き名プロデューサー、トミー・リピューマ。グラミー賞に33度ノミネートされ、5度受賞。彼のプロデュースしたアルバムは7,500万枚以上の売り上げを記録している。彼が携わったImperial、A&M、Blue Thumb、Warner Bros.、A&M/Horizon、Elektra、GRP/Verveというすべてのレーベルから、彼が手掛けた代表的な楽曲を収録した、未亡人公認のオムニバスCD。ジョージ・ベンソン、マイケル・フランクス、マイルス・ディヴィス他アーティストの数々の名曲を収録。AORファン、フュージョン・ファン垂涎の貴重な写真を収録したブックレットが付いた、3枚組CD。 ブックレットには、マイルス・デイヴィス、マイケル・フランクス、ダイアナ・クラール、ドクター・ジョン、サンドパイパーズ、クロディーヌ・ロンジェ、ニック・デヵロ、アル・シュミットなどと撮影された、音楽史的に大変貴重な写真の数々を収録。
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