祝!35周年 クリストファー・クロス「アナザー・ページ」

35年前の今月、クリストファー・クロスは華々しいセールスをあげたセルフ・タイトルのデビュー・アルバムに続く作品をリリースした。


「Sailing」、「Ride Like the Wind(風立ちぬ)」、「Never Be The Same」、「Say You’ll Be Mine」、「Arthur’s Theme (Best That You Can Do)( ニューヨーク・シティ・セレナーデ)」という、すべてトップ20入りしたシングルを立て続けに放った結果、ラジオに欠かせない存在となったクロスは、状況を楽しむどころか窮地に追い込まれていた。デビュー・アルバムがあまりにも成功してしまったため、セカンド・アルバムがそのセールスを上回る可能性はほとんどなかったからだ。『ANOTHER PAGE』はビルボード200の11位となってあっさりゴールドを獲得したものの、評論家たちはクロスのセカンド・アルバムが前作ほどうまくいかなかったと大喜びで騒ぎ立てた。 


2011年の『Popdose』とのインタビューで、クロスは『ANOTHER PAGE』のセールスが期待外れだったことを認め、いわゆる「セカンド・アルバムのスランプ」というものが、たんなるロック評論家たちのでっちあげではなかったと明言している。


「だってね、結局のところ『ANOTHER PAGE』は半分くらいしか売れなかったんだ」とクロスは言う。「だけど、ファースト・アルバムは600万枚くらい売れた。で、2枚目は300万。だから悪くはなかったのさ。実際、おかしいよね、その年の年間セールスで、『ANOTHER PAGE』はワーナーから出た2番目に売れたレコードだったんだから。もっと売れたレコードを出したのはロッド・スチュワートだけ。つまり、その年はレコードのセールスそのものが振るわなかったのさ。だけど……ごく正直に言って、セカンド・アルバムのスランプってやつは迷信じゃないね。だって、“ベスト・ニュー・アーティスト”を獲得した人たち……たとえば、(ブルース・)ホーンズビー、トレイシー(・チャップマン)、リッキー(・リー・ジョーンズ)なんかがそうだけど、ある程度の期待を掻き立てたが故に、僕を含めて全員がちょっと苦しむことになったと思うんだ」


クロスは『ANOTHER PAGE』が「どちらかというとバラード・アルバム」だと認めるが、当時彼の人生ではいろいろなことが起こっていて、そのせいでそうした音楽的方向性に進んだのだと考えている。


「最初の結婚が終焉を迎え、僕はページという名の素晴らしい女の子に出会って恋に落ちてしまい、その結果として『ANOTHER PAGE』というアルバムを作ることになったんだ」とクロスは説明する。「多くの歌が彼女のために書かれたから、ほとんど彼女に捧げられた愛のアルバムみたいなものなんだよ。さらに、同じ頃に彼女の親友のローラ・カーターが痛ましくも殺されてしまい、僕はローラとすごく親しかったから”Think of Laura(忘れじのローラ)”を彼女にたむけて書いたんだ。いくつか本当にいい歌があったよ。たとえば、アート・ガーファンクルと書いた”Talking in My Sleep(夢のささやき)”とか、カール(・ウィルソン)が歌っている”Baby Says No(つれないベイビー)”とか。僕はカールとすごく親密だったからうんと思い出深いよ。だからとてもいいレコードだと思う。ぐっとメロウになっているけど、楽曲を誇りに思っているし、いい出来といえるんじゃないかな」



皮肉なことに、ファースト・シングル「All Right」はいちばんあとからアルバムに加えられた曲で、「ふたりについて何か高揚感があってポジティブな歌を書いたらどうか」というページの提案で書かれたのだという。結果としてビルボード・ホット100の12位を記録するヒットとなった。


しかし、『ANOTHER PAGE』からの最大のヒットとなったの は「Think of Laura」だった。

ABCのメロドラマ『General Hospital』で番組の人気カップル、ルークとローラに結びつける形で使われて成功に至ったのだが、先に引用した『Popdose』のインタビューでもわかる通り、その歌はテレビの登場人物のためではなく故ローラ・カーターのために書かれたのだと、クロスはいつもかならず強調している。 



クリストファー・クロス『アナザー・ページ』 

滋味あふれるヴォーカルと卓越した演奏テクニック、そしてツボを押さえたプロデュース・ワーク。都会的かつ緻密なサウンドで、多くの人々を魅了したクリストファー・クロスが満を持して発表した渾身のセカンド・アルバム。プロデュースはマイケル・オマーティアン。このアルバムからは「忘れじのローラ」(全米9位)、「オール・ライト」(全米12位)のシングル・ヒットが生まれた。 

<参加ミュージシャン>

マイク・ポーカロ(B)、ジェフ・ポーカロ(D)、スティーヴ・ガッド(D)、スティーヴ・ルカサー(G)、レニー・カストロ(Per)、パウリーニョ・ダ・コスタ(Per) 、カール・ウィルソン(Vo)、マイケル・マクドナルド(Vo)、アート・ガーファンクル(Vo)、ドン・ヘンリー(Vo)、JDサウザー(Vo)、ジェイ・グレイドン(G)、アーニー・ワッツ(Sax)、トム・スコット(Sax)、カーラボノフ(Vo)ほか 

発表:1983年 

録音:ワーナー・ブラザーズ・レコーディング・スタジオ、ノース・ハリウッド 

『アナザー・ページ<SHM-CD>』(CD発売中)

WPCR-17465 ¥1,300(本体) 

https://wmg.jp/artist/christophercross/WPCR000017465.html 


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