プリンス【F's GARDEN -Handle With Care- Vol.17】

音楽業界ブログリレー「F's GARDEN -Handle With Care-」

 「やまやま」さんから3週目のバトンを受け継いだ「SOULBROTHER NO.2」です。 

いよいよ、待ちにまったプリンス殿下の特集です! 



プリンス特集 ファンク求道者としての足跡
~PARADE IN A FUNKY PLACE~


【第1章】プリンス?というアーティストの名前の記憶を辿る

プリンスの名前を見かけたのはストーンズ 「スティル・ライフ」('82)を自分のお小遣いで、初めて購入した際に、熟読していたライナー・ノーツでの一文でした。 

1981年10月9日、10日ロス・アンゼルスでの公演で、ストーンズの前座を務めた(ミック・ジャガーが指名)が、散々たる結果に終わったことが書き記されている。 

パフォーマンスの映像はさすがに見当たらなかったが、演奏した曲目は判明している。 


【演奏曲リスト】

1.BAMBI 

2.WHEN YOU WERE MINE 

3.JACK U OFF 

4.UPTOWN 

5.WHY YOU WANNA TREAT ME SO BAD 


この時期のプリンスは、まさにファンク指数の高いアルバム「Controversy:戦慄の貴公子(1981.10.14リリース)」をリリースする直前だったし、翌年にはLP2枚組の大作ながら、大ヒットとなった傑作「1999」を放ち、続く「パープル・レイン」への足がかりを作るまさに過渡期であったのだが…ミックのアンテナは正しかったが…まだ、時代がプリンスに追いついていない事を象徴する記事だったので、鮮明に覚えている。


【第2章】プリンスとの再会→新世代型ファンク・サウンドに衝撃!️

ストーンズのLPのライナーで見かけたプリンスという名前は、記憶の彼方に消えていたが、当時(83年頃)、欠かさず観ていた音楽ビデオを紹介する番組、小林克也氏の“ベストヒットUSA”で「1999」が、まずまずの位置にチャートインしていることを知る。 もしかして、あのライナーで酷評されていたアーティスト…という、やや邪な興味が湧き、翌日、レンタル屋さんに行き、2枚組のLPを借りたのでした。 高校生でありながら、すでに、JBやスライを聴きはじめていたが、チープで淫靡ながら、なんとも言えないエクスタシー感で包まれた独特のエレクトロ・ファンク・サウンドに、完全に虜になってしまったのでした! 


「1999」('82)


【第3章】最盛期を迎え“ファンク求道者”へ 

その後、周知の通り、大ヒットを記録した映画「パープル・レイン」('84)で、スターダムへの階段を一気に駆け上った。 


映画「パープル・レイン」


「パープル・レイン」オリジナル・サウンドトラック

本当に、何度というか?何百回も当時観た(笑)のですが、やっぱり一番印象的なのは、ラストの演奏シーンで、「DIE 4U」~「BABY I’M A STAR」を演奏するシーン。


劇中、ロック色の濃いサウンドが多い中、ファンク色の濃い楽曲をJBの影響も感じさせてくれるパフォーマンスは圧巻でした!


もちろん、ファンク好きには、あのジャム&ルイスを擁するTHE TIMEの演奏シーンも必見ですね~


続く85〜87年の名盤3作で、最盛期を迎えるプリンスのアーティストとしての本質は“ファンク道の探求”にあったと思う。


「AROUND THE WORLD IN A DAY」('85)

ロック色を強調し、大ブレイクを果たした前作「パープル・レイン」から一転、サイケ色テーマに、コンセプト色を打ち出した作品。

当時のエイド的には、全く参加せず…我が道を突き進む。まるで、シンコペイトすることを拒むかのようなサウンドだからこそ、聴き手の内面心理に沁み込んでいくんだろうなと魔訶不思議な作品に漂う独特な雰囲気を、当時は、そう理解していことを今でも、聴く度に思い出す。


当時12インチでシングル・カットされた「RASPBERRY BERET」のロング・バージョンが、ファンキーでカッコ良いので、お聴きください。


「PARADE」('86)

“今度は、どんな作品で驚かしてくれるのか?” 

という聴き手の想像・期待をも、軽々と超えて届けてくれたのがこのアルバム。 

(映画「アンダー・ザ・チェリー・ムーン」のサウンドトラック盤)

極端に…いや、極限までムダを削ぎ落としながらも、綿密に計算されつつ、冷んやりと身体の振動に、呼応するかのような繊細なサウンドは、まさに圧倒的な完成度を誇る作品を届けてくれた。そう、まさに、スライ&ザ・ファミリー・ストーンの名盤「フレッシュ」との相関性をも感じさせてくれる。

当時、このアルバムのツアーで来日しているのですが、残念ながら観られなかった…(泣き)


それでは、本作からシングル・カットされ、大ヒットしたファンク・チューン「KISS」のビデオ・クリップをどうぞ。


「SIGN OF THE TIMES」('87)

このアルバムでは、“NEW POWER GENERATION”の名義はなく、クレジットはプリンスのみとなっているにもかかわらず、前作のクールさから一転、逆に、ファンク集団としての熟成度が高い演奏が、ギッシリ詰まった作品に仕上った(当時LP2枚組)!


この3連作の後も、ファンク道への探求は続き、遂には“真っ黒な、どファンク”作品、「ブラック・アルバム」を完成させる!

まさに、ファンク純度200%の作品でしたが、残念ながら諸事情により、お蔵入りに…。

「ブラック・アルバム」※現在入試困難


【第4章】プリンスの“ファンク道”は次世代へ受け継がれていく~

プリンスが登場し、成功した意味とは?~

80年代の半ばにまでメインストリームにあったブラックコンテポラリーに対するカウンター・カルチャー(脱R&B、オルタナティヴ)の象徴とでもいうべき存在でありながら 、作詞・作曲、演奏、パフォーマーはもちろんプロデュース等マルチな才能をカリスマ性を誇りつつ、メジャーなアーティストとして、君臨し、成功したその存在意義は大きい。 

そして、過剰表現とも評される歌詞・楽曲に隠れがちだが、過去の偉人達(ジミヘン、JB、スライ他)からの影響をしっかり受け継ぎ、オリジナルな楽曲・サウンドに昇華させている点こそが、重要な鍵を握っている。


プリンスのファンク求道者としての意志を、現代に継ぐアーティストD'ANGELOのプリンスに対しての偏愛ぶりは、この曲のカバーからも伺える。


「She’s Always In My air」


【第5章】ファンク求道者の遺言&贈る言葉

2015年のグラミー賞 最優秀アルバム賞のプレゼンターとして檀上に上がると、 「Albums, Remember Those? Albums still matter. Like books and black lives, albums still matter. (アルバムって皆覚えてるかい? アルバムはまだ大事だ。本とか黒人の命と同じようにアルバムって重要なんだよ)」とスピーチした。 


「アルバムを覚えてる?」 

この問いかけの意味するものとは…ストリーミング、ダウンロード、配信等音楽への接し方が変遷していく中で、アルバムが軽んじられている現在の音楽シーンに、「アルバム作品の重要性を忘れてないか?」と警鐘を鳴らした。 


プリンスがストーンズの前座としてパフォーマンスしたが、ストーンズファンからブーイングを浴び、ステージを降りざるを得なかったその夜、ミック・ジャガーは自分たちのファンの反応に激怒し、オーディエンスに向かってこう言ったという。 

『プリンスがどんなに凄い奴なのか、オマエらにはわからないだろう!』 

ミック・ジャガーのプリンスへの評価は揺るぎないものだった。


プリンスの訃報に際して、ミックは哀しみと共に、こうコメントを寄せている。 「プリンスは、革命的なアーティストであり、偉大なミュージシャンであり、そして偉大な作曲家だった。独創性あふれる作詞家であり、驚くべきギタリストでもあった。その才能に限界はなかった。この30年でもっともユニークかつエキサイティングなアーティストだった」と。 


ミックの意見に激しく同意します。



【SOULBROTHER NO.2】

某チェーンの音楽屋店長。

無類のブラック・ミュージック好き。 

音楽の伝導師を目指して日々、修業中。 平成の総括よりも・・・2010年代の検証は?ってことに心配を 覚える今日この頃(笑) 


Warner Music Life

輸入盤CD・紙ジャケ・再発カタログ情報を中心としたワーナーミュージック・ジャパン運営の大人向け洋楽ポータルサイト

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