フリートウッド・マック【F's GARDEN -Handle With Care- Vol.18】

ファンクに特化したプリンス殿下の特集を書いてくれた「SOULBROTHER NO.2」さんから、3週目のバトンを受け継いだ「T-KAWA」です。私も個人的に大好きなフリートウッド・マックの特集です!


オトコとオンナがいて、そこに歓びがある…男女混成ヴォーカリストバンドの最高峰、フリートウッド・マック。


突然ですが、ビートルズは好きですか? 

多分、ほとんどの方が好きか嫌いかなら、好きですよね?なぜ?…曲が良くてカッコ良いから…。はい、当たり前ですね。その通りです。中にはアルバム全部持ってる&聴いてるくらい凄く好きな人も数えられないくらい沢山いるでしょう。中にはマニアというか、ヲタクレベルにビートルズが好きな人もいますよね。私が社会に出て、最初の会社の15歳くらい歳上の上司にもそういう人がいて、かなりのヲタクだったので、色々な話しが聞けて楽しかったです。ですがその先輩、事もあろうか、ビートルズのソロは一切聴かないというんです。ソロ作品もガンガン聴いていた私はもちろん驚きました。そんな人もこの世にいるのか?くらいの驚きでした。何でですか?と尋ねると、「だって、ずっと同じ声なんて、飽きるしつまらないから」だと。なるほど。逆に言えば、ビートルズの魅力はそこも、確かに大きいかもしれないと、その頃、やっとその事も再認識しました。ストーンズやツェッペリンなど、絶対的なリードシンガーがいるバンドには無い、大きな魅力ですよね。


では、メインに入るとして、箸休めではない、割と本気な複数ヴォーカリストのバンドというと…ビーチボーイズ、キッス、イーグルスなど、大成功している面々にも、もちろん、そこそこはいます。では、さらにこれが男女混成となると…グンと減ります。CSN&Yはちょっとバンドというよりユニットっぽいですが、割と近年でいうと、

The Black Eyed Peas、Lady Antebellum、The White Stripes、The Ting Tings…etc. とかでしょうか? 

そんな中でもロック・ポップス史上、最も成功したといえば、何と言っても今回の主役、フリートウッド・マックではないでしょうか(前置き長っ)。


当時14歳だった私が彼らを知ったのは、1977年、あのイーグルス「ホテル・カリフォルニア」を蹴落として、全米ナンバーワンになったアルバム「噂」…という音楽誌の紹介に目を取られてからなので、彼らの母体が1968年からリリース活動があったことを考えると、かなり遅い方でしたが、まぁ、日本での世間的な認知度は、多分、そんなもんだったと思います。結果、「噂」は、31週間に渡って全米1位を獲得し、翌年には同アルバムで『グラミー賞』を受賞します。ここでも、あの「ホテル・カリフォルニア」を抑えてのアルバム賞受賞を果たしました。(「ホテル・カリフォルニア」は楽曲で同年の最優秀レコード賞を受賞)


Rumours / 噂 35周年記念盤 デラックス・エディション <SHM-CD> 

2013.02.27 発売¥3,600+税/WPCR-14887/9 

Disc1: 2004年リマスター音源+“Silver Springs”(B面曲) 

Disc2: 1977年のツアー音源のコンパイル 

Disc3: セッション、アンプラグド、デモ音源(未発表) 

* Disc2&3は初出し音源



最初はピーター・グリーンを中心とした、当時としては珍しかったトリプル・ギター編成の、ブルース系男所帯バンドから始まった彼らが、徐々にメンバーを刷新していって、女性シンガー2名+男性シンガー1名の3名ものリードを取れるシンガーを擁したことと、その直後の大成功への階段を登ることとなるのは、決して無関係ではない気がします。もちろん、稀代の才能を持った男性シンガーソングライター&ギタリスト[リンジー・バッキンガム]と、妖艶な魅惑の女性シンガー&シンガーソングライター[スティーヴィー・ニックス]の加入、それに刺激を受けて、どちらかというと目立たない存在だった既存女性キーボーディストだった[クリスティン・マクヴィー]が、シンガー&シンガーソングライターとしての潜在能力を一気に開花させて行ったことの、相乗効果が全て同時期に合致して、奇跡的な傑作「噂」を生み出して、驚異的なワールドワイドの成功を手にして行きます。「噂」(11thアルバム)の前作「ファンタスティック・マック」(1975年10thアルバム)から既にそのメンバーでの、まるで化学反応のような創作力の加速化は始まっていました。 

この時のメンバーは、ミック・フリートウッド(D)、ジョン・マクヴィー(B)、クリスティン・マクヴィー(V,K)、スティーヴィー・ニックス(V)、 リンジー・バッキンガム(G,V)です。 


Fleetwood Mac (Expanded) / ファンタスティック・マック エクスパンデッド・エディション<SHM-CD> 

2018.01.24 発売¥2,900+税/WPCR-17938/9 

「リアノン(ウィル・ユー・エヴァー・ウィン)(シングル・ヴァージョン)」、「マンデイ・モーニング(アーリー・テイク)」など、レアトラック21曲収録。 



ロック・ポップス史に燦然と輝く、この2作の内容は、相当語り尽くされていますので、ここでは細かくは割愛致しますが、何十回、何百回とこれらの作品を聴いた方でも、もしレアトラック入りの近年のリイッシュー盤をお持ちでなければ、これは相当楽しめますので、かなりのおススメです。

そして、この2作以降もコンスタントに質の高い優れた楽曲、アルバムをリリースし続けているのを考えると、やはり代表作集のベスト盤も、ここでおススメしておきます。68年デビュー以来、ちょうど50周年のメモリアル盤が今年リリースされています。3枚組で、ディスク1は、大ブレイク前のブルースバンド時代のセレクトが、レーベルの枠を超えて選ばれていますので、逆にそっちをあまり聴いて来なかったリスナーにもうってつけの1枚かと思われます。もちろん、大ブレイク後のマスターピースも2枚のディスクにしっかり収められています。



50 Years - Don't Stop / ドント・ストップ ― 偉大なる50年の軌跡 

2018.12.26 発売¥3,600+税/WPCR-18148/50 


男女混成に話しを戻しますと、男女混成バンドに起こりがちなマイナス?面…そーです。男女関係の問題がバンド内に発生しがちです。ひとつの目標に向かう男女が長い時間を共有するのですから、それは会社員でもバンドマンでも、同じ事が起こります。メンバー内での恋愛関係です。不思議なもので、その恋愛関係が上手くいっていれば良い作品を生んで行くかもしれませんし、上手くいってない方が逆に切なさが募って?良い作品を生んだりもするかもしれません。そこが芸術家の面白いなんて言ったら失礼ですが、不思議なところです。会社員だと顔を合わせるのも辛くて、仕事にはマイナスに働きそうですが…。フリートウッド・マック内でも、2組の恋愛関係が存在していましたが、ハッピーエンドというわけには行かなかったようです。その事が彼らにとって、ブレイクに向けてはプラスに働いた面もあるでしょうし、のちのちの脱退劇などマイナスに働いた部分も、無いとは言い切れないかもしれません。マクヴィー夫妻においては壮絶な…まぁ、プライベートなことは余計なお世話ということで、そんな当時“噂”を呼んでいた諸事情もここで細かくは記載しませんが…。


では、単純にリスナーの立場から男女混成の魅力を再考してみすと、ビートルズ然り、同性の別シンガーでも、それぞれの別の魅力を味わえるのに、それがさらに男女となると、大きな声の音域の違い、男女という元々の価値観の相違による表現の違いなどが、クッキリとアルバムやライヴに、次から次へと繰り出され、まるでアラカルト料理のような魅力となって現れます。だったらコンピレーションアルバムを聴けば一緒?…そうはいきません。そこは、サウンドは絶対的な統一感を背景に、次々と違うヴォーカリストの声が出てくるところがやはり大事です。個人的にはドラムとベースのリズム隊が、完璧なリズムをキープしていることも、すごく重要だと思っています。そして、もちろん、男女混成のコーラスが、ときめくようなポップ感を醸し出します。ゆえにだからこそ、ユニットではなくバンドでこそ、男女混成ヴォーカリストバンドの魅力は増幅していく気がしています。そして、その全ての条件を満たした最高峰が、フリートウッド・マックなんだと思います。


最後に余談ですが、昔、1994年、吉田美奈子さんに仕事でお会いした時のお話しを掲載します。彼女は若い頃、よく山下達郎さんとコーラスやデュエットをしていたのは有名な話ですが、そんな彼女がその時、アルバム「EXTREME BEAUTY」を作成していて、その先行シングル「BEAUTY」で、13年ぶりに山下達郎さんとコーラスを実現してくれていました。そんな彼女にその理由を尋ねてみたんです。すると彼女は、“だってJOYが欲しかったのよ。男女の声が一緒になるとJOYが生まれるの。ボクにとって、達郎くんとだったらそれが一番いい形で表現できるから…”といったニュアンスの事をおっしゃっていたのを記憶しています。さすがは詩人の美奈子さん。たった一言で全てを表してくれてしまったな、と思いました。感じ取れる“ときめくようなポップ感”は、そこに由来しているんだと思います。大ブレイク後のフリートウッド・マックの魅力を、これで、一言で表現できますね。そうです、そこに“JOY”があるんです。



T-Kawa 

 音楽が好きすぎて、逆にノンジャンルな趣味性のオヤジです。 

 2万枚のCDに囲まれてる自宅より、ここでは誰もが知ってるメジャーアーティストの名盤を抽出して、“あ、そんなのあったあった”と想い出していただけるようなご紹介をして行きます~。

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