ルー・リードの名盤『NEW YORK』フォーエヴァー・ヤング・シリーズでのリイシュー記念 元担当者による特別寄稿を掲載!

「35年後のライヴ・レヴュー~タンスの奥からお宝Tシャツが!」


 ルー・リードの1989年発表のアルバム『NEW YORK』をひっさげたツアーのハイライトとなった、ルーの地元ニューヨーク公演が、1989年3月19~21日、23~25日の計6回にわたり、セント・ジェームズ劇場で行われた。筆者が観たのは3月20日のライヴだったかと記憶しているのだが、当時の記憶を辿ってみたいと思う。



会場のセント・ジェームズ劇場はWest 44th Streetと8th Avenueに佇む、いわゆるブロードウェイのいつもは演劇の公演が行われている1927年に設立された劇場で、キャパは1800人ほどだろうか。地元のファンで満員になったヴィンテージ感が漂う由緒正しい会場の雰囲気はとても静かで、まさに大人の空間。開演ブザーが鳴り、ルー・リードとバンドが登場、心得た観客は大きな拍手で出迎えた後すぐに静かになり、ルーが話すのを待つ。ルーから「今日のライヴはアルバム『NEW YORK』からの曲を最初に演って、その後、みんなが聴きたい曲を演る2部構成になるよ」との説明があり、アルバム1曲目の「ロミオ・ハッド・ジュリエット」でライヴがスタート。アルバムの代表曲となる「ダーティ・ブルヴァード」、90年代に見せる新機軸の序章とも思える「グレイト・アドヴェンチャーのはじまり」、「シック・オブ・ユー」、「二月にクリスマス」、アルバム最後に収められている「ダイム・ストア・ミステリー」までアルバム全曲を演奏した。(おそらくこれがスタンダードだと思うのだが)曲間に次の曲の説明をしたり、地元ネタなどを披露する姿はリラックスしているように見えた。それでもステージ上で醸し出す緊張感はまるで敬愛されている大学教授のようで、時折聞こえる男性の「Lou—!」という声援もどこか控えめなものに思えたのでした。


その後(確か休憩をはさんで)、「アイ・ラヴ・ユー、スザンヌ」から2部がスタート。さすがに会場の雰囲気もロック・ライヴ・モードになり、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「ロックンロール」、86年のアルバム『ミストライアル』に収録の「ジ・オリジナル・ラッパー」などを披露し、イントロでついに大人の観客も総立ちになった「スウィート・ジェ-ン」、「ワイルドサイドを歩け」、最後は(確かアンコールで)「サテライト・オブ・ラヴ」で幕を閉じたのだった。


このツアーのバック・バンドを務めたマイク・ラスク(g)、ロブ・ワッサーマン(b)、ロバート・メディチ(ds)との相性もバッチリだ。ルーの動きをじっと見ながら緩急をつける。出るときは出て、抑えるところは抑えるメリハリが実に素晴らしかった。特にアルバム『NEW YORK』の曲ではアルバムでもベースを弾いているロブ・ワッサーマンの音が際立っていたのが印象的だった。
 画像のTシャツはライヴ当日に会場で購入したもので、先日実家の思わぬところから発見されたもの(他にもその時期に行った様々なライヴのTシャツが!)。







この数年後にルー・リードとお仕事することになるとは夢にも思わなかった22歳の夜の出来事。その後の来日公演や最後の来日となったFuji Rock Festival ‘04のエピソードはまた別の機会に。 


11月6日にフォーエヴァー・ヤング・シリーズとして再発売されることになった『NEW YORK』をはじめとするルー・リード、そしてヴェルベット・アンダーグラウンドの作品を是非チェックして頂けると嬉しい。


(ちなみに上記のツアーの音源は、2020年に発表された『NEW YORK[デラックス・エディション]』に収録されている。)


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