レッド・ホット・チリ・ペッパーズ【F's GARDEN -Handle With Care- Vol.36】by T-Kawa
偉大なるロックのレジェンドたちよ、永遠なれ…
レッド・ホット・チリ・ペッパーズ
子供の頃にロック系の楽器を少しでもかじった方は、必ず有名バンドの名曲のコピーから入りますよね。そして、バンドとして合奏した瞬間のなんとも言えない高揚感は、何にも代えがたいJOYがありました。
私も中学生の時にディープ・パープルの「スペース・トラッキン」のギターリフを弾き始めた時に、ドラムの友人が入ってきてくれた瞬間のあの感じ…なんと言うか、ジェットコースターが滑り出し始めたスピード感に似た、フワッとした感覚が瞬間的に身体を包んだ記憶が有ります。
当時、周りにはビートルズ、KISSなんかを上手にコピーするバンドが文化祭で人気を博していました。あの頃は“コピーバンド”という言い方をしていたのですが、コピーという単語に悪いイメージがあったせいか、後々、カヴァーバンドという言い方も使い始めて、しばらく間が空いて、90年代後半?くらいでしょうか、いつしかトリビュートバンド(tribute band)という言い方を耳にするようになりました。
これは海外発信のようで、英米では80年代くらいから非常にグレードの高いカヴァーバンド…ビートルズのカヴァーバンドなどは有料のツアーでビジネスとして成り立っていて、敬意さえも受けていたのはニュースとしては知っていましたが、日本ではずっとオリジナル至上主義みたいなものが根強く根底にあったせいか、カヴァーはずっと評価が低かったと思います。トリビュートバンドはカヴァーバンドとは別定義とされていまして、Wikiによると“楽曲の完全コピーはもちろん、衣裳や使用楽器、ヘアスタイル、アクション、MC、照明、音響の機材、演出手法なども同じものにして、実際のステージを克明に再現するバンドだけが「トリビュートバンド」を標榜できるという厳格な定義づけである”とのことで、そんな「トリビュートバンド」の現在の最高峰の組織の一つが“LEGEND OF ROCK”(レジェンド・オブ・ロック)ではないかなと思っています。
LEGEND OF ROCK
一年に一度くらい、日比谷野音で大きなイベントをやったりもしますが、ベースは年に数回、渋谷のduo Music Exchangeなどで、毎回テーマ性を持って開催されていて、毎回大盛り上がりです。
10年以上人気を誇る、ジミ・ヘンドリックス、レッド・ツェッペリン、レインボウ、キッス、ビートルズらのトリビュートバンドはもちろん、近年はメタリカ、ビリー・ジョエル、ジャーニーなど80‘sのトリビュートバンドも人気が有ります。私の近年の一番のお気に入りは、Queer as Queenです。
折しも昨年から吹き荒れるQueenブームにも乗り、今は本当に人気が有りますが、私はその数年前から大好きでした。Queenのトリビュートバンドは日本には複数あって、TVにも出演するような有名なバンドもありますが、このQUEER(クイアー)はヴォーカリストが若くて英語もネイティヴで、4人のこだわりや情熱も凄いので、若き頃のフレディのパフォーマンスを今に伝えてくれる存在としては、一歩抜きんでている気がしています。そんなLEGEND OF ROCKはオーガナイザーの努力もあって、近年はサマーソニックのメイン会場のマリンスタジアム(現在のZOZOマリンスタジアム)に隣接している野外フリーステージで、2バンド出演のコーナーを務めたりもしています。サマーソニック2011のそのステージを観に行った時に、会場はハイグレードなトリビュートバンドの演奏でいつものように盛り上がっていたのですが、なんだか立ち見の観客の後方がザワザワしていて、何だろう?と思っていたら、どうやらマリンスタジアムの上方の窓から上半身を乗り出して、ワーワー騒いで一緒にLEGEND OF ROCKで盛り上がっている男どもがいて、それが良く見るとその日のサマソニのマリンスタジアムのヘッドライナーだった、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ(以下、レッチリ)の面々で、それを見た観客が今度はそのことで大盛り上がりとなり、上と下とで大騒ぎとなったのを記憶しています。
毎回、前置きの長い今までの私のこのブログの中でも最長の前置きをもって、やっとこのブログの主役、レッチリにたどり着きました(笑)。LEGEND OF ROCKでは残念ながらレッチリのトリビュートバンドは見た事がなく、海外のこのバンドのグレードが驚異的に高い気がします。
Red Hot Chili Peppers Tribute Band (USA) - Californication
レッチリをハイレベルでコピーすること自体、演奏、ラップ含め、かなり難しそうなのは容易に分かります。まして絵的にも似せていくというのは日本人にはかなりハードルが高いかもしれません。その強固な演奏力は彼らのライヴを一度でも生体験していたら、楽器を弾かなくても目が釘付けになるほどだと思います。デビューこそ84年ですが、本格的なワールドワイドのブレイクは90年代後半~2000年代初頭になります。90年の初来日公演はもちろん、今や伝説の富士天神山スキー場で行われたFUJI ROCK FESTIVAL'97辺りまでで彼らのライヴを見届けている方は、変な言い方ですが、自慢して良いと思います。
私が初めて彼らのライヴを目の当たりにしたのは、5万人を熱狂させたFUJI ROCK FESTIVAL'02のグリーンステージでした。その後は2002年の幕張メッセ、横浜国際総合競技場でのTHE ROCK ODYSSEY 2004、FUJI ROCK FESTIVAL'06、2007年の東京ドームと、もっとも勢いが有った時期を観続けました。
その時期のメンバーは、アンソニー・キーディス(Vo)、フリー(B)、チャド・スミス(Ds)、ジョン・フルシアンテ(G)という鉄壁の4人組。何百本(千を超えているのかな?)と観てきたロックライヴで、これほどまでにロックのダイナミズムをハイレベルな生演奏で叩きつけられるバンドを他に知りません。特に強靭なリズム隊は他の追随を許さないほどで、ファンクとハードロックのミクスチャーというジャンルを切り開いていくのには最高の人材だったのかと思います。バンドの知名度を高めていった要素として、もちろんフロントマンのアンソニーの奇行も含めた?絶対的な存在感は欠かせませんが、ワールドワイドの大成功をつかめた大きな要因として、2代目のギタリスト、ジョン・フルシアンテがこの時期に果たした功績が、個人的にはかなり大きかったと思っていまして、バンドの音楽性に最高のケミストリーをもたらすギタープレイはもちろん、メロディメーカーとして、さらにコーラスワークへの貢献も最大級だったと想像に難くないです。
残されているカタログとしては、『Blood Sugar Sex Magik』(91年)、『Californication』(99年)、『By the Way』(02年)、『Stadium Arcadium』(06年)の4枚がこのメンバーによる最高の“成果”と言って良い作品だと思います。さらにその中で完成度という点で、『Californication』(99年)、『By the Way』(02年)の2枚が後世にも語り継がれるだろう歴史的名盤として、ロックファンが避けずに通っていって欲しいカタログになって行く気がします。
Red Hot Chili Peppers - Californication [Official Music Video]
Red Hot Chili Peppers - Otherside [Official Music Video]
Red Hot Chili Peppers - Can't Stop [Official Music Video]
Red Hot Chili Peppers - By The Way [Official Music Video]
まったく捨て曲の無い、全曲飽きる事の無い2枚の歴史的名盤の中から、公式PVがYou Tubeにある収録代表曲を2曲ずつ取り上げてみましたが、特徴的なのはイントロからコードワークに至る、ギタープレイの陰影に富んだ素晴らしいフレーズに最初から耳が釘付けになります。
タフでハード&ヘヴィな印象のバンド全体のパブリックイメージとは、ある意味対照的な、繊細かつ妖艶なストラトキャスターの音色が響き、これがバンドに最大の“ポップ感”をも加味しています。FUJI ROCK FESTIVAL'06でジョンのソロコーナーがあったのですが、なんと、ビージーズのミディアムバラードの名曲「How Deep Is Your Love」(邦題「愛はきらめきの中に」)をストラト一本で弾き語り出すというサプライズを聴かせ、オールドファンは狂喜、若いファンは正直、ポカンと口を開けていたような印象でしたが、これもジョンには大事なルーツミュージックなのが、演奏を聴いていて良く分かりました。
結果として重要人物だったジョンは諸事情あって2009年でバンドを脱退してしまいます。この4人で最高の演奏を全世界に叩きつけた、ウェンブリー・スタジアムでの2007年のLive Earthでの白熱の演奏は、映画にもなったクィーンのLIVE AIDでの同場所のあの伝説のライヴに、勝るとも劣らない名演奏だったと今も思います。
Red Hot Chili Peppers - Live Earth, London, 2007 [Full Concert] HQ
自分は大学を卒業してすぐ、音楽業界の片隅に足を踏み込んだ当時、業界の先輩から“成功するアーティストの基本っていうのが有ってさ、それはきちんとルーツミュージックを分かる形で反映した上で、新しい楽曲を生み出せるか否かなんだよ。その方が聴いている側も絶対に面白いんだよ”…と言っていたのに、妙に納得したのを記憶していまして、レッチリもまさにその定義?にのっとったバンドで、ジミ・ヘンドリックス、レッド・ツェッペリン、スティーヴィー・ワンダー、ジョージ・クリントン、ザ・クラッシュ、他、レジェンドなロック、ソウルファンクの延長線上で、きちんとクリエイトし続けているバンドなのです。
だからこそ、いつ聴いても全く飽きない魅力と輝きを、今も保ち続けているのでしょう。偉大なるロックのレジェンドたちよ、永遠なれ。その魂は今もレッチリの中で息づいています…。
T-Kawa
音楽が好きすぎて、逆にノンジャンルな趣味性のオヤジです。
2万枚のCDに囲まれてる自宅より、ここでは誰もが知ってるメジャーアーティストの名盤を抽出して、“あ、そんなのあったあった”と想い出していただけるようなご紹介をして行きます~。
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