マドンナ【F's GARDEN -Handle With Care- Vol.6】

「SOULBROTHER NO.2」さんからバトンを受け継いだ「T-Kawa」です。ワーナーミュージックのカタログという、心ときめくたく宝箱から、自分が好きなアーティストやアルバムを皆様に紹介できればと思います。ここでは、“あ、そー言えば最近ちゃんと丸々は聴いてないなぁ~”なんて思い出していただければと思っていますので、皆さまに馴染みのある、馴染みのあった…アーティスト、その作品をノンジャンル的に、改めてスポットを当てられたら良いかと思っていますので、どうぞ気楽にお楽しみくださいませ。


<F's GARDEN -Handle With Care- 第六回:T-Kawa>


自分を信じ続ける、
我らの絶対女王をあえて「再検証」してみる…  


MTV時代が到来した、80年代を代表するソロミュージシャン3名と言えば、マイケル、プリンス、そしてマドンナ…であるところに、一般的にはさほど疑問は無いかもしれません。

マイケルとプリンスは男性ソロ同士なので、人気を二分していた感も有りましたが、マドンナは女性アーティストとしては、独占的な人気を博し(一部、ややシンディー・ローパー派?)、マドンナを真似るファンが“ウォナビーズ”と名付けられるなど、社会現象化していたのも、深く記憶されている事でしょう。

とはいえ、ソウル系のファンがドップリ浸かり混んでたりする、マイケルやプリンスほど、音楽的なコアファンがやや少ない感が有ります。ダンスミュージックといっても白人で、初期の歌詞は哲学的でも内相的でもなく、それどころか、あからさまな性解放などの、戦略的なアプローチのインパクトが強すぎたのもあり、ミュージシャンとしての評価よりも、ずっとパフォーマーとしての立ち位置だった気もします。


そんな彼女の作品を、最近聴く機会が減っていたり無かったりしている方に、これを機会に改めて聴いてみてはいかがでしょう…というのがこの企画なワケですが、個人的には今もブレイク時期の「バーニング・アップ」(’83年)、「ライク・ア・ヴァージン」(’84年)は、ボートラにロングバージョン入りリマスタリングの輸入盤で、「トゥルー・ブルー」は国内通常盤ですが収録曲の「ホワイト・ヒート」という曲が好きで、これらは今も時折楽しんでいます。

それらのオリジナル盤は、いま、ワーナーから紙ジャケ仕様でそれぞれ出ていますから、それをコレクトするのもおススメです。


ですが、皆さんにここでそれらのオリジナル盤を細かく語って強くおススメし直すよりも、やはりノーマルに初期80年代完全網羅のグレイテスト・ヒッツ『MADONNA マドンナ ベスト THE IMMACULATE COLLECTION ウルトラ・マドンナ グレイテスト・ヒッツ』(国内盤の正式タイトル、ながっ(^^;;)、もしくは、2009年、キャリア25年の時点を集約したオールタイム・ベスト・アルバム『CELEBRATION セレブレイション~マドンナ・オールタイム・ベスト <ヨウガクベスト1300 SHM-CD>』を、ぜひ改めて一家に一枚という感じでおススメ致します。

最初から最後まで、全く飽きの来ないダンスチューンクラシックス が、ずらりと並んでいます。THE IMMACULATE COLLECTIONは80‘sトラック集中型なので、HOLIDAY / LUCKY STAR / BORDERLINE / LIKE A VIRGIN / MATERIAL GIRL から、ハウスの代名詞、VOGUE 、レニー・クラヴィッツとのコラボ曲にして初のMTV放送禁止曲、JUSTIFY MY LOVEあたりまでを楽しむことが出来ます。CELEBRATIONは、輸入盤はダブルアルバムで、配信だとそのヴォリュームですが、国内盤は超凝縮した18曲をテンポ良く楽しめます。初期のOPEN YOUR HEARTは、その後、ライヴで必須曲となったのもあり、こちらでベスト初収録となっています。   


「トゥルー・ブルー<紙ジャケット仕様>」

発売中

¥2,315+税 WPCR-17079

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さて、せっかくこんな機会を頂きましたので、私のパーソナルなマドンナの想い出話しをひとつご紹介させてください。かなり前の記憶なので、細かいやり取りは少し違っているかもしれませんが、大筋は合っているはずです。


2006年5月、当時、2年振りのワールドツアー「コンフェッション・ツアー」をスタートし、同年9月には、1993年の『ガーリー・ショウ・ツアー』以来13年ぶりの来日公演を行ったわけですが、この来日時に記者会見が行われました。

ビッグアーティストの記者会見は、プロモーションネタが終わると、一応「質問コーナー」があって、大勢手を挙げますが、実は質問できる人と内容は事前に仕込まれていたりして、当たり障りのない質疑応答が3問くらいあって、それではお時間となりました〜みたいな流れがお約束なのですが、この日のマドンナは、なんと、質問オールOK、出尽くすまで全部答えます…という、驚きの記者会見でした。

みんな恐る恐る、でもだんだんツッコミが鋭くなって行きましたが、物の見事に質問を裁いていく彼女の受け応えに、なんとクレバーな方なんだろうと、グイグイ引き込まれていきました。

そんな中で、一人の見た目もインパクトのある方が手を挙げて「私は新宿2丁目のゲイ雑誌の編集をしています」と。おいおい、コレはスゴい雑誌からも来たぞ〜、ワーナーさん、大丈夫なのかっ?っと、会場に一瞬の緊張感が走りました。

そして彼は「あなた(マドンナ)はデビュー当時から、全てのマイノリティに対して、なんの差別も偏見もなく背中を押し続けてくれていると感じています。日本のゲイの人々に対して何かメッセージを頂けませんか?」と。確かに今でもカミングアウトし難い環境なのに、当時はまだまだ世間的な理解は全く得られていなかった時代です。

そして、マドンナの横にいた通訳さんが、そのまま彼女に英訳を伝えました。マドンナはうなずきつつ質問した彼をキッと見据えて

「日本のゲイ?その人間がゲイか何かなんて関係無い。全ての人間は“自分をとことん信じろ!”。私が言いたいのはそれだけよ」と。

ゲイ雑誌の編集者は感極まって手で溢れ出てくる光るものを抑えながら、何度もお辞儀をしていました。

私もこのやり取りは今でも強く記憶しているくらいなので、当時、本当に感激しました。言葉自体もそうですが、どんな相手にもひるむことなく、今で言う“忖度”する事もなく、真っ直ぐに物事の本質をとらえて語り続ける姿に感動していました。

ライヴ同様の2時間にも及ぶ濃い質疑応答で、本当に質問が出尽くしたあたりで、司会の方が「それでは最後に先生にご質問お願いいたします」と振られたのは、日本の女性音楽評論家では最高峰のレジェンドの先生が指名されました。著名な方なので、まぁ、周りも〆としては適役だな…という空気でした。

でも、その先生は事もあろうに「あなたはブレイク後の初来日の時に、ハワイかなんかでナンパしてきた若い男をチャラチャラと引き連れて来たけど、あれは何だったの?」と。えっ!?それがこの感動の長時間記者会見の最後の締めの質問なの!?と、また新たな緊張感が会場に張り詰めました。

通訳さんにそのまま伝えない方が…なんて感じで、皆、マドンナの反応に注視していました。

通訳を聴き終えたマドンナは、なんと、その大物女性音楽評論家に対して、中指を立てた●●ックユーポーズをビシッと決めると、そのまま席を立ち会場を後にしました。

会場中、私も含め、皆、下を向いて必死に笑いをこらえていました。実に痛快な〆ポーズでした。 


彼女にはビッグアーティストや新進気鋭のアーティスト、ダンサー、パフォーマーら、様々な異能たちがクリエイトに参加し続け、今も最新作が最高傑作というスタンスを取り続けています。

彼女はきっと、身のまわりの、例えばハウスドクターや栄養士などにその身を過度にゆだね過ぎることなく、常に“自分を信じて” これからもアーティスト活動を、人生を営み続けていくのでしょう。

同世代を生きている音楽ファンにとって、マイケルやプリンスを失った大きな喪失感を、どこかで癒し続けてくれるのは、きっと彼女なのかもしれません。 

 マドンナの音楽性やすばらしい映像アプローチを、丹念に語り尽くすべきかもしれませんが、もう今までいくつもの素晴らしいレビューが出ていますので、私が稚拙な評を更に並べるより、おススメのレビューを下記にご紹介しておきます。

YouTubeもたくさん埋め込まれていますので、長文ですが飽きずに楽しめますよ。  


マドンナはいかにしてポップの女王であり続けてきたのか──その軌跡を追う!


 以上で、今回の音楽業界ブログリレー「F's GARDEN -Handle With Care-」を終わりとさせていただきます。次回をお楽しみに…





T-Kawa

音楽が好きすぎて、逆にノンジャンルな趣味性のオヤジです。

2万枚のCDに囲まれてる自宅より、ここでは誰もが知ってるメジャーアーティストの名盤を抽出して、“あ、そんなのあったあった”と想い出していただけるようなご紹介をして行きます~。




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