マイケル・マクドナルド【F's GARDEN -Handle With Care- Vol.30】by T-KAWA
Vol.29でブーツィ・コリンズの特集を書いてくれた「Soulbrother No.2」さんから、バトンを受け継いだ「T-KAWA」です。グラミー賞の常連ヴォーカリスト、マイケル・マクドナルドの特集です。
AORの魂は永遠に…マイケル・マクドナルド
the pillows(結成30周年おめでとうございます)のDr. 佐藤シンイチロウ さんから昔伺った話しなんですが、ある日彼が電車の中で、男子高校生二人の話しが聞こえてきたそうで、どうやら外国人の苗字に小さなcが入ることに関して話していて、その話しによると、息子という意味があるそうで、つまりはマッカートニーなら、カートニーさんの息子、マクドナルドなら、ドナルドさんの息子…というような意味なんだそうです。当時、へぇ~っと思って覚えていたのですが、このブログを書くにつけ、あの時以来、初めて一応検索してみました。wikiによるとこんな感じでした。→“マック、マクは、ゲール語(アイルランド語、スコットランド・ゲール語など)で、本来は「息子」を意味した言葉(父称)。ただし、現代のアイルランド語やスコットランド・ゲール語ではその意味では使われず、姓の一部としてのみ使われる”…はい、やはり間違いないようです。と、いうことで、今回も無駄な前置きの後、このブログの主役、マイケル・マクドナルド(Michael McDonald、1952年2月12日生~ )のお話しに突入いたします。
彼は1952年2月12日生まれ、ミズーリ州セントルイス の出身だそうですが、LAに移住して、しばらく下積みで苦労を重ねたのち、74年にスティーリー・ダンのバッキングに起用されてから頭角を現すようになり、ドナルド・フェイゲンにはかなり気に入られたようで、ツアーはもちろん、レコーディングのバッキングヴォーカルも務めるようになりました。翌75年にはトム・ジョンストンの代役としてドゥービー・ブラザーズに加入し、ここから一気にスターダムへと駆け上がります。それまで荒っぽいギターロック中心だったドゥービーを、往年のファンは賛否有ったと思いますが、ブラックテイストを押し出し、キーボードとギターのアンサンブルを重視し、複雑なリズムを組み合わせ、サキソフォンソロなども多用した、都会的なサウンドへと変化させて行き、皆さんご存知のように、78年のアルバム『ミニット・バイ・ミニット』、さらにそこに収録されていた、ケニー・ロギンスとマイケルとの共作曲「ホワット・ア・フール・ビリーヴス」は、32テイクもの撮り直しを重ねた苦心の一作で、苦労の甲斐もあって全米1位を記録し、遂にはグラミー賞の最優秀アルバム、最優秀楽曲、最優秀ポップグループなどを受賞しました。その中心人物マイケル・マクドナルドの才能と実力が完全に認められ、LAの音楽シーン…強いては世界の音楽シーンに変化を与えてしまったほどの、ひとつの頂点を迎えます。
ドゥービー・ブラザーズ「ミニット・バイ・ミニット<SACD/ハイブリッド 2016リマスター>」
The Doobie Brothers - "What A Fool Believes" (Official Music Video)
この映像では分かりづらいですが、この若き頃のマイケルはライヴでは女性ファンからキャーキャーと騒がれている映像も観たことがあります。まぁ、同じリードヴォーカル&キーボードで、同じステージ下手に陣取っているところもかぶる、オフコースの全盛期の小田和正さんもキャーキャー言われていましたから、あれと同じ感覚かもしれませんが。声に魅力がある男性は、見た目がそこそこ良ければモテるようで、余談ですが、先日テレビのバラエティで“声が魅力の有名人”のランキングで、福山雅治さんらのイケメンを押さえて、堂々1位は麒麟の川島 明さんでした(笑)。
話しを戻しますと、やはりマイケルの魅力は何と言っても“声”ではないでしょうか。デュエットやコーラスのオファーは絶えず、参加曲も軒並み大ヒットしていったので、いつしか“女性ヴォーカリストが最もデュエットしたい男性ヴォーカリスト”なる称号も得ています。主なデュエットヒット曲は、83年のジェームス・イングラムとのデュエット曲(男性同士でしたね)「ヤー・モ・ビー・ゼア」は、グラミー賞最優秀R&Bパフォーマンス賞を受賞し、パティ・ラベルとのデュエット曲「オン・マイ・オウン」は全米No.1に輝き、他にもアレサ・フランクリン、ニコレット・ラーソンらとのデュエット・ナンバーも人気が有ります。コーラス参加としては、スティーリー・ダンの『うそつきケイティ』から、クリストファー・クロスの80年の大ヒット曲『風立ちぬ(Ride Like The Wind)』でのコーラスワークも光っています。
Patti LaBelle - On My Own (Official Music Video) ft. Michael McDonald
さて、今回一番ご紹介したい作品は82年リリースのこちらです。
ドゥービー解散後、マイケル入魂のファースト・ソロアルバム(実際には下積み時代に当時ノンリリースだった作品がありますが…)です。
マイケル・マクドナルド「思慕(ワン・ウェイ・ハート)<SHM-CD>」
ロックポップスの世界で、英国からビートルズやストーンズらがブルースとロックンロールを通して、黒人音楽と白人音楽の境界線を越えたあと、様々な垣根の越え方があったとは思いますが、マイケルもまたドゥービーを通して、新しい融合の可能性を見出し、それは80年代に“AOR”というジャンルで結実していきます。1976年、ボズ・スキャッグス『シルク・ディグリーズ』以来、マイケルも参加しているクリストファー・クロスの79年『Christopher Cross』(邦題『南から来た男』)などと共に、AORの名盤として、今も高い評価を受けているオリジナル作品です。ドゥービーで名声を得た直後の初ソロなので、参加アーティストもすこぶる豪華で、ジャズ界からスティーブ・ガット(Ds)、ブラックコンテンポラリーからウィリー・ウィークス(B)、ルイス・ジョンソン(B)、グレッグ・フィリンゲインズ(Key)、TOTOからジェフ・ポーカロとスティーヴ・ルカサー、LAの人気ヴォーカリストからケニー・ロギンス、クリストファー・クロス、ブレンダ・ラッセルらが参加。シンセサイザーやシーケンサーを多用したような“80年代サウンド”になることなく、腕利きたちのジャムセッション風の作品となり、結果として、今も聴き飽きる事の無い、生演奏によるエバーグリーン性が保たれた作品となった気がします。ボズやクリストファーはギタリストでもあるので(二人ともめちゃ上手い!)、やはりピアニスト、キーボディストであるマイケルらしく、リズム展開のアレンジも複雑ですし、バラードはミュージカル的にドラマティックで、ストリングスも繊細です。もちろん、スティーリー・ダンを彷彿とさせるような、ひねりの入ったアーバン・サウンドもあります。この中から「アイ・キープ・フォーゲッティン」というシングル曲が大ヒット(全米4位)していますが、ルイス・ジョンソンのベースとジェフ・ポーカロのドラム、そこにマイケルのフェンダーローズが絡んでくるイントロだけで、カッコ良さは鳥肌モノです。スティーヴ・ルカサーの抑え気味のギターワークも素晴らしい。バッキングヴォーカルはマイケルの妹のモーリン・マクドナルドが声を聴かせてくれています。アルバム・タイトル曲「思慕(ワン・ウェイ・ハート)」では、全盛期のスティーブ・ガット(Ds)とウィリー・ウィークス(B)の超強力リズム隊にロベン・フォードの強烈なギター・ソロが絡んでいきます。全10曲、本当に捨て曲無しの傑作ナンバーがずらりと並んでいて、聴くものを飽きさせることなく、マイケルの持つ本来の魅力的な歌声を味わうことができます。AORの魂は、ここに永遠に刻まれたと言っていいでしょう。
Michael McDonald - I Keep Forgettin' (Every Time You're Near) - Soul Train '82
最後に、やはり大人には便利なマイケルのベスト盤もご紹介しておきます。
ソロの代表曲はもちろん、ドゥービー時代の人気曲も6曲収録し、先に挙げたジェイムス・イングラムやパティ・ラベルとのデュエットもしっかり収録した、全19曲というヴォリューミーなベスト・アルバムです。
T-Kawa
音楽が好きすぎて、逆にノンジャンルな趣味性のオヤジです。
2万枚のCDに囲まれてる自宅より、ここでは誰もが知ってるメジャーアーティストの名盤を抽出して、“あ、そんなのあったあった”と想い出していただけるようなご紹介をして行きます~。
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